AOKI MASANORI Architectural Laboratory
青 木 昌 則 建 築 研 究 所
トップページ home 作品 home 青木昌則建築研究所について home ブログ、エッセイなど home 業務の流れ・ご案内 home お知らせ
Home > Blog(essay list) > Essay68
essay68
ブラック・ボックス
2007年1月(26日)のダイアリーで耐震強度偽装問題について書いていて感じた、

僕が昔から思っていた事を少しここで書こうかと思います。


耐震強度偽装問題で報道されているように、

今日の建築構造計算は構造計算ソフトと呼ばれる国土交通省(旧建設省)認定の計算ソフトで

構造計算を行っている場合がほとんどです。

建物に適した計算方法を選定し、積載荷重などのさまざまな条件の数値を入力すると、

あとはコンピューターが自動的に構造計算を行い、OKかNGかを判定してくれるというものです。

もちろん構造設計は単純に構造計算だけではなく、

構造計画という建築構造をどういった風に組み立てるかという大切な部分がありますが、

ここでは構造計算について述べさせてもらいます。


現在のように構造計算ソフトで構造計算を行う前は手計算で構造計算を行っていました。

昔は僕も何度かそういった手計算の構造計算書を目にした事はありますが、

今ではほとんど目にする事はありません。

大学の構造計算の講義でも基本的には手計算で構造計算をしていました。

(当時の)大学の構造計算の試験も当然手計算でした。(今はどうか知りません。)

手計算でひとつひとつ計算していく事は確かに手間も時間もかかります。

でもひとつひとつ計算を積み重ねる事をやめて、

コンピューターで瞬時に構造を判断する事は、スピードと引き換えに大切なものも見落としかねません。

入口(数値入力)と出口(計算結果)があれば、途中の過程はどうでもいいのです。

まさにブラック・ボックスです。

最初に入力する数値によって、途中の計算(応力など)にどう影響し、どういった結果になるかという判断ではなく、

OKかNGかで判断されるだけです。


僕は構造計算の専門家ではないので、詳しい部分までは分かりませんが、

僕が若い頃、構造設計の方からこんな話を聞いた事があります。


「自分が若い頃はまだ構造計算と言えば、手計算でした。

 その経験を踏まえて現在はコンピューターによる計算をしていますが、

 若い所員なんかはコンピューターでしか計算した事が無く、手計算の経験がありません。

 つまり、計算の経緯を本当の意味で理解していないんです。

 ここをこうしたらこうなるとかいった判断がなかなかできないんですよ。」と。


そこには大きなリアリティの欠如があるのではと僕は感じます。

簡便性や利便性と引き換えに失ったものです。

もちろんコンピューターによる計算をまったく否定するわけではありません。

構造計算だけに限らず、意匠設計でコンピューターを使う事も同様です。

コンピューターを使う事自体は良いのですが、

そのすぐ横に潜む危うさをキチンと認識しなくてはいけません。

コンピューターで出された結果が(故意か故意でないかははともかく)仮に間違っていたとしても、

ブラック・ボックスと化したコンピューターが出した結果を人間は鵜呑みにし、

「ちょっと待てよ、この条件でこの結果はちょっと怪しいな。」という疑問を人間の脳から奪ってしまいます。


人間はリアリティある想像力を持たねばなりません。

コンピュータに代表される便利なオートマティックというブラック・ボックス化されたシステムは、

人間から考える力、判断する力を奪い去ってしまいがちです。

利便性とは逆の場所にあるもの、一見無駄に見えるもの、

時にはそういったものが本当の豊かさや温かみを与えてくれます。

そしてまた、ギスギスした社会に対して、潤滑油のような役割で物事をうまく運んでくれるものです。

利益や便利さだけが最優先されるような社会から、ほんの少しでも前に移動できるといいですね。



≫Blog(essay list)へ戻る Home

ホーム | 建築作品 | プロフィール | 設計の流れ | 建築家のブログ | 旧ダイアリー | エッセイ | お知らせ | お問い合わせ

青木昌則建築研究所は住宅をはじめとして建築全般の建築設計及び現場監理を行う建築設計事務所です。
愛知県をはじめ、岐阜県、三重県、静岡県の東海地方を中心に、ご依頼があれば全国どこへでも足を運びます。
設計のご依頼、ご相談を随時募集しておりますので、お気軽にお問い合わせください。メールを送る
青木昌則建築研究所 〒482-0036 愛知県岩倉市西市町西市前52-9 102号 Phone&Fax 0587-37-7136
copyright 2009,aa-Labo all right reserved