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essay63
設計図はCAD?それとも手書き?
以前、このEssayのコーナーでCADで設計図を描く事について

少しだけ書いた事があります。(Essay23「ホームページを始めた事」参照)

それはパソコンで本当に生きた設計図を描く事ができるかという疑問です。

その時にもそれは半分は正しく、半分は間違っていると思うと書いたけれど、

その考えはやはり今でもそうだ。


僕が大学生の頃はT定規を使って図面を描いていた。

中には大学生のうちからドラフターと呼ばれる製図版を持っている人も中にはいたけれど、

お金の無い学生なので基本的には皆T定規だった。

でも設計事務所にアルバイトに行くとドラフターが置いてあり(当然ですが・・・)、

そのドラフターを最初の頃はぎこちない手つきで使っていた。

もう20年ほど前の話なので設計事務所の中でも

高価なCAD(当時はビックリするくらいの値段が付いていた)を導入しているところはまだほとんどなかった。

学生の設計課題とは違って、実務的な設計作業をアルバイトで経験する事になり、

設計図の持つ本当の意味をその頃ようやく理解したのだと思う。


当たり前ですけど、設計図って建物を作る時の作り方を描いたものです。

他には、クライアントに建物の内容を伝える手段であったり、

役所(あるいは検査機関)に建築確認申請などを審査する手段であったりもします。

でも基本的には作り方を描くというのがその大部分の目的です。

子供の頃作ったプラモデルの組み立て説明書と広い意味で同じです。

つまり、設計図って他人に建物の作り方を伝える手段ですね。


他人に建物の作り方を伝える手段なのだから、まず分かり易くなくてはいけません。

そして不明な点などできるだけ無いように詳しく描く必要もあります。

「一体ここはどうなってるんだ?」ばっかりの設計図では困ります。

そして時には職人をやる気にさせるような図面というものもあります。


設計図を見慣れている人なら分かるけれど、

設計図の良し悪しってCADで描いた設計図より手書きで描いた設計図の方がハッキリと出る。

CADで描いた設計図は押し並べてキレイに描かれています。

極端な事を言うと、上手い下手の差が出にくい図面です。

下手な人(設計の上手くない人、よく知らない人)が描いても

パッと見それなりの設計図に見えてしまいます。

それに比べて手書の設計図は設計図を見慣れた人が一目見れば、

その設計図の弱点(納まっていない所や自信の無い所)が一目で分かります。

「何かこのへん怪しいな・・・。」とかね。

基本的に設計図って描いたものをチェックしながら直し直し描いていくものです。

CADの図面は何となくキレイに描いてあるから、

正しいように見えてしまってチェックしにくいとよく言われる。


T定規からドラフターに変わったように、

ドラフターからCADに設計図の作図手段が変わったのだと言われれば確かにそうかもしれない。

僕がまだ手書で図面を描いていた頃、構造設計事務所に勤める後輩のA君と言い合いになった事がある。

まだCADは過渡期で、使っている人間がまだ慣れていないだけだと。

でも僕もCADを実際に使い、十分に活用した経験を踏まえて、やはり思う。

根本的に紙に描く事から画面上で描く事に大きく変化してしまったのだと僕は思う。

「それがどうしたの?」と思われるかもしれない。

でも僕にとって(いや、そう感じている人もきっと多いはずだ)それはとても大きな違いだ。

製図版に貼り付けられた1枚の紙(設計図)全体を見渡しながら、細かいディテールを描く。

常に全体と細部(ディテール)のスケール感が描く人の中で行ったり来たりしている。

本物の建築自体も実はそうで、全体の構成も大事だけれど、細かいディテールもとても大切だ。

常にその両方が共存して成り立つものである。

そのリアルな建築と紙に描くという行為が上手くシンクロしていると僕は思っている。

それに比べてCADは全体と細部が同時に見渡しにくい。(なかなか上手く表現できないな・・・)


それでも、現代においてCADを使用しないというのは、なかなか難しい状況なのも確かだ。

CADならではの良い点というのももちろんある。

図面などもメールで送ることもできるし、いろいろやり取りもし易く、管理も良い。

でも、肝心な事を忘れてはいけないと僕は思う。

基本的に僕は手書で描く感覚を頭の片隅に持ちながらいつもCADで図面を描いている。

おそらくCAD本来の効率性から言うと、非常に非効率的な描き方をしているかもしれない。

でも、いくらCAD(コンピューター)で描いたからと言って、

実際の建築はバーチャルでもCGでもない、リアルでアナログ的なものです。

もっと具体的で手にとることのできる確かなものです。

それは僕自身が非常にアナログ的な人間だからそう感じてしまうのかもしれません。

若い人からは「ナニ古臭い事言ってんの?」と言われるかもしれない。

でも、そういうものって結構大切だとは思いません?


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