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essay61
作品?
僕たち設計士は家などの建物を設計する。(もちろん住宅なんか設計しない設計士もいるけど・・・。)

そして現場監理を行い、施工業者と一緒に建物を建てる。

その自分が設計して完成した建物が、よく「作品」と呼ばれたりする事がある。

中には積極的に設計士自らが建物を「作品」と呼ぶ事もある。

ただ僕の個人的な考えから言うと、自分が設計した建物を「作品」と呼ぶのは何となく抵抗がある。

自分の設計した建物はあくまで自分がやった「仕事」という感じです。

ただ、「仕事」という表現がしっくりこない場合は便宜的に「作品」と呼ぶ場合もありますが、

そういった場合を除けば、基本的に僕は設計した建物を「仕事」と表現しています。

実際このホームページにも過去の実績を「仕事」と言う意味合いで「WORKS」として紹介しています。

(※実際は英語として「WORKS」には作品集という意味もあると思うけれど・・・。)


「作品」と言うとなんだか、自分ひとりで(しかもすべてを創造的に)つくったような感じを受けます。

でも実際、建物は自分ひとりでつくり上げる事はできない。

まずクライアントの存在があって、それに伴いクライアントの要望がある。

(決して悪い意味ではなく、自分の意思とは反対の方向に進む場合も時にはある。)

そして工事に不可欠なのが工務店などの施工業者であり、大勢の職人さんです。

確かにアイデアやプラン、形を考え、それを設計図に起こすのは設計士だけれど、

それだけでは建物は建たない。

クライアントという存在は時には設計士自身というケースもあるが、

設計・施工の会社の場合でも、工事すべてを自分ひとりで行なう事は不可能だ。

そういった建物の完成にたずさわった人たちを抜きにして、

ただ単純に、「この建物は(設計士である)ボクの作品です。」と言う事はやはり何となく抵抗がある。


設計図を描く事が設計士の最終的な目的ならば、

その設計図が「作品」と考える事もできますが、

少なくとも僕は設計図を描く事が最終目的では決してない。

自分で建物を考えて、設計図を仕上げて、それだけで十分な報酬を得たとしても、

建物をつくり上げる事ができなければ僕はこの仕事をしたくない。

やはり僕の最終的な目的は建物を考え、設計をする事だけではなく、

建物をつくり上げる事なのです。

設計図はあくまで自分で設計した建物(のつくり方)を施工業者や職人などに伝える手段でしかありません。

そして建物完成という目的をより良い形で達成する為に多くの設計図を描くに過ぎないのです。


自分の設計した建物を「作品」ではなく「仕事」と考えていると言うと

中には設計という仕事を単に「こなしている」だけだと誤解を受けるかもしれませんが、

決してそうではありません。

自分の仕事には自分なりの「誇り」と「情熱」を持っていつも向かい合っています。

でも出来上がった建物はやはりひとつの「仕事」であり、「作品」ではありません。

住宅なんかで言うと、クライアントは一生その設計士の「作品」に住まなくてはいけないのでしょうか?

いいえ、住宅はクライアントのものです。

正確に言うならば、個人の住宅と言えども公然の目にさらされるものですから、

ある程度の社会性を持つものとみなし、その何割かは公共のものと言えるかもしれません。

でも、決して設計士のものではありません。

だから、建物に設計士のこれ見よがしなエゴは必要ないと僕は考えます。(哲学は必要です!)

建物は決して設計士の「作品」としてクライアントに押し付けるものではありません。

もし「作品」と呼ぶとしたら、それはクライアントがそう感じるかどうかという事なのではないでしょうか?

つまり、設計士が「作品」と決めるものではなく、クライアントがそう感じるかどうかだと思います。


クライアントが家に愛情を持ち、自由に住まい、時には(設計士が)思いもかけない使い方をしたりしながら、

素敵な暮らし方をしてもらうのが住宅として理想の姿なのではないかと僕は思います。

完成して何年か経って訪れた家のクライアントが、とても上手に暮らしている様子を見るのはとても嬉しいものです。


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