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essay32
軽井沢の山荘
建築家・吉村順三(1908-1997)の設計した建物に「軽井沢の山荘」という有名な建築がある。

吉村順三が自身の別荘として1962年に建てた僕の大好きな建築のひとつです。


軽井沢の雑木林の中に1階の小さなRC(鉄筋コンクリート)造の上部に

大きく張り出した木造の2階が載ったとても小さくて質素な別荘です。

アプローチの湾曲した小道から見え始めるその佇まいだけでも

その山荘の素晴らしさが十分に伝わってきます。

吉村順三はその別荘がとてもお気に入りで、足繁く通ったそうです。

とても親密なその内部空間は僕の心を捉えて離しません。



「1階と2階の用途そして建築的機能と経済性を考えた時、おのずとこのような形になりました。」


この吉村順三の言葉どおり、そこには建築家の哲学はあっても、建築家のエゴは全く感じられません。

何の気負いもなく、ただそこに静かに佇んでいます。



「少ない材料で豊富な空間をつくるのが、建築の本当の魅力」


この言葉は建築の魅力を物語っていると同時に、建築の難しさも表現しています。

少ない材料で豊富な空間をつくるという事は、

その構成やプロポーションが重要な役割を果たす事になり、

その答えは建築家の経験と勘、そして哲学がよりどころとなります。



「山荘は、贅をつくした建物である必要はなく、ごく私的な生活を楽しむ場でよいと思います。

 自然とともにあることが感じられる、質素で気持ちのよい場であること。

 この山荘に私が求めたのはそれだけです。」



吉村順三という建築家の素晴らしさはこういった言葉の中にその答えが感じられます。

建築家は時に自分のエゴの部分を表現しようとしてしまいがちです。

もちろん僕も表現したい空間というものを持っており、それがエゴと言えばそうかもしれません。

表現としてやりたい事もたくさんあります。

でも、いつも心掛けているのは、そういったはやる気持ちをできるだけ抑えて、

建物が醜くならないように、デザインをやり過ぎないようにするという事です。

やり過ぎないというのは、何もしないという事ではありません。

本当に必要なものだけを吟味し、抑制するという事です。


僕もまだまだ若く、ついついやりたい気持ちが顔を出してきます。

でもそういった時にはいつも、「本当にこれでいいのか」と自問自答し、自分を戒めます。

まだまだ自分の力が足らず、全て上手くいくわけにはいきませんが・・・。

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