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essay31
Sさんからのメール
「こんばんわ。ご無沙汰しています。

 昨日の雪はすごかったですね。

 この辺では久しぶりに15~ 20cm位の雪が積もりました。

 子どもたちは雪だるまやかまくらを造ったり、

 玄関脇の斜面でソリをしたりと楽しく遊んだようです。

 ちょっと重いですが写真を貼付しましたのでご覧になって下さい。

      


 今日でこの家に住み始めてちょうど半年が過ぎました。

 夏秋冬と3つの季節をとても快適に楽しく過ごせました。

 夏は地下に潜った1階がとても涼しく、秋は大量の落ち葉が自然の中に

 建っていることを感じさせてくれました。

 「なるべく木を残して斜面に家を建てたい」

 素人の大雑把な希望を

 青木さんがとても上手に形にしてくれた結果だと思っています。

 今の季節、居間にいると木の鳴る大きな「パキッ」という音がして

 家が生きているんだなと感じます。

 春になったら芝の種を斜面に蒔いてみようかと思っています。

 秋、試しに少し蒔いたところなかなか良い感じに芽を出していました。


 13日、久しぶりにお会いできることを楽しみにしています。

 それでは。                        S    」


                           (原文抜粋)




これは、つい先日届いた「多治見の家」のクライアントであるSさんからのメールです。

送っていただいたメールと添付の写真を見て、僕の答えは間違っていなかったと改めて感じました。

建物を設計する時には、自分が行っているこの行為は本当に正しいのだろうかと、

いつも自問自答しながら僕は設計しています。

特にこの「多治見の家」はもともとの敷地は比較的広い山のような雑木林で、

建物を何処にどうやって配置するか、建物の床の高さを何処に設定するか、

またそれらが予算内でできる事かどうかを、本当に悩みながら考えました。

工事前に見積もりのために現地に訪れたある工務店の方は、

「本当にこんな所に家が建つんですか?」と言って、建設場所の斜面を指差しました。

でもSさんの信頼が僕の心の支えになり、どうにかそれを形にする事ができました。


設計の段階でももちろん頭の中や模型では建物の形や配置は正確に理解しています。

でも、実際に出来上がってくるまでは、建物の本当の形や佇まい、雰囲気全ては分かりません。

これは建築という大きな力であり、難しさでもあります。

実際のリアルな建築はやはりスケッチや模型、コンピューターグラフィックスとは全く違います。

言い換えれば、模型やコンピューターグラフィックスなどでは表わしきれない何かを

僕は実際の建築に込めたいと考えています。


この家が建ち上がってきた時に僕自身、

この建物のあり方は間違ってはいなかったと感じていました。

そして、半年ではありますが、

年月を経て家族にも廻りの景色にも馴染んでいる様子を見て

改めてそれを感じると同時にとても嬉しくなりました。

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