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ヘンテコなカタチ
昔、僕がまだ働き始めてしばらくの頃、

土曜の夜に部屋で、当時僕の好きだった自動車雑誌NAVIを読んでいたら、

確か「ヘンテコなカタチ」というタイトルである記事が載っていた。



雑誌NAVIはもちろん今でも発行されている月刊の自動車雑誌で、

当時は鈴木正文さんという編集長が編集をしていて、

毎号欠かさず購読していた数少ない雑誌でした。

鈴木さんが編集長を辞めてしまってからは、何故か僕もパタッとNAVIを読むのを止めてしまった。

鈴木さんは同じ自動車雑誌「ENGINE」で今も編集長をしていると思う。



その「ヘンテコなカタチ」という記事の写真には、

一見すると少しいびつなカタチのイタリア製の真っ赤なスポーツカーが写っていて、

基本的にはそのスポーツカーに関する記事だった。

その真っ赤なイタリア製スポーツカーの後ろに、ある建物が写っていた。

K・B・ケロッグという建築家が設計した教会(内村鑑三記念館)である。

その教会の外観はとても教会とは思えない変わったカタチをしており、

大小さまざまな大きさのコンクリート造のアーチが隙間を空けて、

寄り添うように斜めになりながら建っており、

そのアーチとアーチの隙間にはガラスが嵌め込まれている。

僕は以前にその建物を建築雑誌で目にして知っていた。

工法も変わっていたので、建築雑誌には工事中の写真などで解説がされていた。

その建築雑誌を読んだ時にはそれ程感じなかったのだけれど、

NAVIに載っていたその写真を見た時に僕はどうしてもその建物が見たくなってしまった。

教会の場所は長野県の軽井沢である。



僕は次の日の日曜の朝早く、その教会を見るためだけに車で家を出た。

当時はお金もなかったので、一般道をひたすら走りお昼過ぎに軽井沢に到着した。

車を降り、歩いてその教会に近づくと、木に隠れるようにその教会がひっそりと建っていた。

半分は地下に埋まっているような建物なので、教会らしからず建物の高さ自体はそれ程高くない。

一番小さなアーチの内側にある入口から恐る恐る中に入ると、

アーチとアーチの隙間のガラスから光のシャワーが教会全体を照らし出していた。

全体の建物のイメージは正に洞窟の中といった感じなのだけれど、

この光のシャワーが天井から降り注ぐ感じはとても幻想的な雰囲気だった。

普通の教会には上の方にステンドグラスが嵌め込まれているのが一般的だけれど、

そもそもこのステンドグラスも、ずっと昔は森の中で行っていた教会の行いの時に

森の中の木漏れ日が降り注ぐのを象徴したものだと以前聞いた事がある。

それを思うと、この教会のアーチの隙間から注がれる光は正に森の中そのままの感じがして、

その点は最も教会らしい点と言えなくもない。

今でも、この時の、自分の体全体で感じたこの空間の感触ははっきりと覚えている。

しばらくはそこにボーっと立ったままだった。

これほど光を強く意識した事はその時まできっとなかったと思う。

僕の記憶の中に強く残っている建築の一つである。

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