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essay13
僕の仕事
僕の仕事。

それはもちろん建物の設計をする事である。

自分の所有する建物以外は、設計を依頼するクライアントが存在する。

そして、当然の事ながら、クライアントのお金で設計し、クライアントのお金で建物を建てるわけである。

クライアントのお金で建物を建て、クライアントが建物を使用するわけだから、

クライアントを満足させる事は仕事の中でとても大切な部分である。

しかし、こういった言い方は誤解を招くかもしれないけれど、

僕の場合、そのクライアントを満足させる事が第1条件とは考えていない。

クライアントは僕のところに何かを期待して設計の依頼をするわけだから、

その期待にこたえるべく僕の力を出し切るつもりで仕事には望んでいる。

それはつまり、僕自身が納得のいく仕事をするかどうかという事につながってくると思う

(もちろん僕自身が100%満足がいくという事はまずありえない。

いつもいつも自分はまだまだ未熟で、自分の力の無さを痛感する。)。

自分自身がよくないと思うような設計は、クライアントがもし満足したとしてもやはり不本意に感じてしまう。

もちろん僕は決して自分の考えをクライアントに強引に押し付けるタイプの建築家ではない。

できる限りクライアントの要望をくみ取り、お互いの考えをプランの中に生かすことを考えている。

それでも、第1優先条件としてクライアントの満足を頭の中に置くのではなく、

僕自身が良いと感じられる建物に、結果としてクライアントに満足してもらえる事がやはり大切と考える。


僕の場合、設計監理契約を正式に交わす前に有料でプランニングを行うケースが殆どである。

有料と言ってもそのお金は厳密にはプランニング料ではない。

あくまで、僕の考えを前もって提示する手数料(数万円ほど)としての金額で、

プランの著作権は事務所が保有するという形である。

例えば、そのプランが僕の手を離れてしまい、

僕の考えた建物の完成に立ち会う事のできない仕事はできないという事。

過去にも、僕のプランを気に入って、そのプランを数十万円で買うから、実施設計や現場監理はしなくてもいい、

とクライアントから言われたケースがあったが、丁重にお断りした。

もちろん断れば、仕事そのものが消滅してしまう訳だし、

既にできているプランを渡すだけで数十万円もらう事ができたから、

もったいない話と言えばそうかもしれない。

当時の僕にはその数十万円は喉から手が出るほど欲しい金額だったけれど、

結局僕はイエスとは言えなかった。

僕の考えるプランは僕の大切な子供のような物である。

この世に姿を現す最後まで僕の手でしっかりとつなぎとめておきたい。

現場監理において僕自身の手が届かないという事は、

同じ設計図であっても全く自分の意図する物と違う建物ができてしまうからだ。

やはり完成まではキチンと手を掛けたいし、

こんな未熟で小さな僕でもそれなりの誇りと哲学を持って仕事に向かっている。


事前のプランニングについても、僕の場合だいたい1.5~2ヶ月間くらいの時間を頂いている。

早くても1ヶ月、長い時は4ヶ月ほど待っていただく事もある。

1週間くらいで考えられれば効率はいいかもしれないけれど、

僕はやはり自分自身で納得のいくプランを提案したいので、

それがまとまるまでクライアントには申し訳ないけど待ってもらっている。

なかなかいいアイデアが浮かんでこない場合もあるし、

アイデアは浮かんでもそれが形としてプランの中にうまく納まらず、

何度も何度もエスキスを繰り返す場合もある。

模型を作りながら変更する場合もある。

それとは別に予算や敷地の制限などもあり、期待と不安が交錯しながら結構苦しむ期間でもある。

そうして、プランが出来上がり、クライアントにプレゼンテーションをするまで、

そしてその後もプレゼンの返事をクライアントからもらうまでの期間も

「クライアントにあのプランを気に入ってもらえるだろうか。」と、またまた期待と不安でいっぱいになる。

クライアントから良い返事が返ってきた時は仕事になったという事はもちろんだが、

自分が一生懸命考えたものが実際の建物として出来上がるという喜びがふつふつと湧き上がってくる。

いつもの事ながら嬉しい瞬間である。


モノをつくり出す作業というものは、当然の事ながら楽しいことばかりではない。

どちらかというと苦しい事の方が多いと思う。

世間の人が思い描いている建築家というイメージとはおそらく大分違うもので、

資料を集めたり、建築基準法などの法律を調べたり、様々な事を勉強したり、地味で雑用的な作業も結構多い。

役所に足を運んで、時には頭の固い担当者とやり合わねばならない時もある。

設計も適当なところで納得して、それなりに仕事をこなしてやっていけばそれはそれで楽なのだけれど、

そういう訳にはいかない。

経験を積めば積むほど仕事がやりやすくなるかというと必ずしもそういう訳ではない。

もちろん、経験を積む事によって様々な状況に対して対処できる能力は上がってくる。

しかし、経験を積めば積むほど、新たに見えてくる課題が次から次へと現れる。

建築というものはその範囲がとてつもなく広く、尚且つとても奥が深い。

センスという才能だけではとても太刀打ちできない大きな代物である。

自分の中だけで考え、コンピューターのCGなんかでセンス良くキレイにプレゼンテーションするような人でも、

実際の建物を本当の意味でつくり上げる事ができない事が多々ある。

自分の中だけで満足し、建築という大きな力を見ていない、あるいは見る事ができないからだ。

そこには強い情熱と強い意思が必要だし、

建築ってイメージや写真性だけではなく、もっと具体的で手に取る事のできる確かさが必要だと僕は思う。

それが僕のこのホームページの最初に書いている「リラックスできる空間」という事である。



 追記

「クライアントを満足させる事は僕の第一条件ではない」、と書いたけれど、

少し適切な言い方ではないなと感じる。

正確には「クライアントの要望を叶える事は僕の第一条件ではない」と言った方が正しい気がする。



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