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essay8
グランドツーリング
グランド・ツーリング・・・、

つまり、自動車旅行の事。

独身の頃はよくひとり(あるいは仲間達と)で自動車旅行に出かけた。

車の中で寝る事もあったし、安いホテルに泊まる事もあった。

だけど、当時はとにかく高速道路は使わなかった。

つまり、目的地に着くことだけが旅の目的ではないからだ。

若い頃はお金もなかったけど、時間だけはあったので

一般道を走り続けて気ままに

東北から、四国、九州までいろいろな所へ行った(残念ながらまだ北海道には行った事がない)。

好きな音楽を聴きながら車を運転するのはとても楽しかった。

当時は僕が高校時代から好きだった浜田省吾や佐野元春なんかをよく聴いていた(そう、僕はそういう世代なんだ)。

もちろん、旅の目的地はある。

大体のそれは建築を見るということがほとんどなんだけど、

ほかの事は全て行き当たりばったりの旅ばかりだった。

当然宿の予約なんかはした事がない。

車での旅はその自由さが魅力だ。地図を開き、思うがままに行く事ができる。

また、長い時間運転しながらいろいろな事を考える事もできる。

その時の仕事の事、新しい仕事のアイデア、自分自身の事など。

(旅は自分自身を見つめる良い場であると僕は常々思っている。)



昔、ゴールデンウィークの連休を利用して新潟にある谷村美術館(設計・村野藤吾)を見に、

いつものように一般道を走り、山越えの長野経由で新潟県の糸魚川まで行った。

(まあこれは、グランド・ツーリングと言うよりは、プチ・グランド・ツーリングと呼んだ方が正確かもしれないけど。)

美術館の近くで泊まり、開館時間に合わせて美術館を見学した。

その時は僕のほかに人はまったくいなくて、本当にゆっくりと建物を見る事ができた。

そこはとても小さく静かな美術館で洞窟の中のような雰囲気がある。

その後、予定外だったが日程を延ばし能登半島をグルッとひと巡りした。

能登半島の道はいわゆるワインディング・ロードという感じでとても気持ちよく車を走らせた覚えがある。

最終日、岐阜の白川村経由で帰ろうと山道を走り、五箇山トンネルを抜けた・・・。

ところがなんとトンネルを抜けたところは雪が降り、

道路にも雪が積もっていた(ゴールデンウィーク!にである。

いったい誰がゴールデンウィークに雪が降るなんて考えるだろう。)。

そして僕の車はFRのノーマルタイヤである。

試しに少し進んでみたけどすぐにスリップしてしまい、危うく立ち往生しそうになる。

街中ならともかく、ほとんど車が通らないような長い雪道を越えてこれ以上進む気にはなれなかった。

やれやれである。

仕方なく再び日本海側まで引き返し、遠回りの米原経由で帰るしかない。

しかし僕には残りの所持金もガソリンの残量も少々心もとなかった

(当時の僕はクレジットカードなんてものは持ち合わせていなかった)。

でも、とにかく引き返すしかない。

翌日は仕事があるので、とにかくその日のうちに帰らなくてはいけないのだ。

その日の夜、家に着いた時には燃料計は警告灯が点灯し、所持金は僅か二百円ちょっとだった。

このときはホント家に着くまでドキドキしてた。

でもこういうのが旅である。

と、僕は思う。


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