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essay6
教え
僕が設計事務所に入所した時に当時設計チーフをしていた先輩がいた。

僕が入所して1年後にその先輩は独立してしまったので一緒に仕事をした期間はあまり長くないし、

建築について専門的な事、技術的な事など、あれこれとその先輩から教えてもらったという記憶はほとんどない。

ただ、短い期間だったけど一緒に仕事をした事や、

仕事が終わった後なんかにいろいろな話をした事はよく覚えている。



今でこそ僕も設計を検討する時に書くスケッチ以外、図面は全てCADで書いているけど、

当時は手書きで図面を書いていたし、一般的にもまだCADはそれほど普及していなかった。

働き始めたばかりの僕は見てくれを考えて、図面で引く鉛筆の線は細く、薄く書いていた。

その方がキレイに見えると思っていたからだ。

しかしその図面を見た先輩はこう言った。

「もっと濃く書け。」と。

僕はそういうもんかなあと思いつつ線を濃く引いてみた。

しかし先輩は「もっと濃く書け。そんな自信のなさそうな線を引くな。」

と言って自分で線を引いて見せた。

それはとても真っ黒で太い線だった。

その時僕は、内心いくらなんでもそれは太いし濃すぎると思った。

でも、今の僕ならこう思う。

その時先輩が僕に教えようとしてたのは見た目だけの事ではなく、

建築の設計という行為に対する姿勢なんだと。

つまり、設計図というものは、設計意図をクライアントや施工者に伝える平面的情報でしかないが、

その中に設計者としての思いを込めて書かなくてはいけないという事であり、

自信の無いいい加減な事はするなという事なんだと。


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